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名古屋高等裁判所 昭和56年(ネ)116号 判決

控訴人(原告) 村井邦彦

被控訴人(被告) 村上尚彦 外一名

原審 名古屋地方昭和五四年(ワ)第三五九号・八九四号(昭和五六年三月二日判決)

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の申立

(控訴人)

一  原判決を取消す。

二  被控訴人村上尚彦は原判決添付別紙イ号図面及び説明書記載の水耕栽培用ベツトを使用してはならない。

三  被控訴人株式会社サンスイは原判決添付別紙イ号図面及び説明書記載の水耕栽培用ベツトを製造販売及び使用してはならない。

四  被控訴人株式会社サンスイは控訴人に対し、その製造にかかる前項記載の物件を廃棄せよ。

五  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

六  第四項につき仮執行の宣言

(被控訴人ら)

主文同旨

第二当事者の主張及び証拠関係

当事者双方の主張、証拠の提出、援用、認否は、次に付加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する(ただし、原判決九枚目表二行目(編注、本書一四四頁一一行目)の「公告され」の次に「る」を加入し、同一一枚目裏五行目(同上、一四六頁五行目)の「防上」を「防止」と改める。)。

(控訴人)

一  本件考案の構成要件(3)の密閉構造につき、本件登録請求の範囲には掩被密閉の具体的手段の記載がない。原判決は明細書の考案の詳細な説明の項及び図面の記載を参酌して、その具体的手段は、袖縁4の付いた覆蓋5を基体内側上方の段2に当嵌させることにあると認められるとする。しかし、これによれば本件考案の技術的範囲は実施例に限定されてしまうことになるから、これは登録請求の範囲の解釈を誤つたものである。登録請求の範囲には密閉構造の特色構造が記載されていないのであるから、この点につき本件考案には公知の蓋付の箱と比べて相違するような特異な構造はないものとみるべきである。

二  第三者が実用新案の作用効果を低下させる以外に何らすぐれた作用効果を伴わないのに、専ら権利侵害の責任を免れるために、考案の構成要件のうち比較的重要性の少い事項を省略した技術を用いるときは、その行為は考案の構成要件にむしろ有害な事項を付加してその技術思想を用いるにほかならず(不完全利用)、考案の保護の範囲を侵害するものと解すべきである。

被控訴人は、イ号物件は本件考案の構成要件(1)のうち「段2」を欠いていると主張するところ、右「段2」は基体に覆蓋をするため(覆蓋を支持するため)の手段であるが、イ号物件は右「段2」を省略して、基本底部にわざわざ突出部を設けてこの部分で覆蓋を支持する方法をとつている。これは被控訴人株式会社サンスイにおいて専ら本件実用新案権侵害の責任を免れるためにとつた構成であり、右突出部を新たに設けることによつて特異な作用効果を発揮するわけではない。また、イ号物件においては覆蓋と基体との嵌着の仕方が本件考案におけるよりも若干緩いのであるが、イ号物件におけるこのような構成は、本件考案の作用効果を低下させる以外何らのすぐれた作用効果を伴わないものである。結局イ号物件は本件考案の構成要件にむしろ有害な事項を付加して本件考案の技術思想を用いるものであり、本件考案の保護範囲を侵害するものである。

(被控訴人)

一 控訴人の不完全利用の主張は争う。

二 被控訴人株式会社サンスイは本件考案について無効審判を請求しており、その理由の要旨は、本件考案の構成要件(1)及び(2)は出願前公知であること、構成要件(3)は「掩被密閉」による細菌の侵入防止の作用効果がないことを控訴人自身が認めていること、右(1)(2)(3)の構成の組合せは当業者がきわめて容易に考案できる(実用新案法三条二項)ものであることである。そして、本件考案は無効とされる蓋然性が高いから、本件考案の技術的範囲はその明細書(実用新案公報)に記載されている字義どおりの内容をもつものとして最も狭く解するのが相当である。具体的には本件考案の技術的範囲は実施例に限定されるので、明らかにこれから外れるイ号物件は本件考案の技術的範囲に属しない。

理由

一  当裁判所も、控訴人が本件実用新案権を有するところ、被控訴人らが製造、販売、使用するイ号物件は本件考案の構成要件(1)(正面背面の内側上方に段2を設けた発泡スチロールの基体1を次々と継ぎ合わせたものであること)のうち「発泡スチロールの基体1を次々と継ぎ合せたものであること」という部分及び構成要件(2)(基本1の内側をビニールシーツで掩つたものであること)を具備するが、構成要件(1)のうち「基本の正面背面の内側上方に段2を設けた」との部分及び構成要件(3)(基本1に発泡スチロールの覆蓋5を当嵌し、ベツトに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉したものであること)を具備していないと認めるが、その理由は、次のとおり改めるほか、原判決理由説示(原判決一四枚目裏九行目(編注、本書一四七頁一五行目)から一七枚目裏一〇行目(同上、一四九頁一〇行目)まで)と同一であるから、これを引用する。

原判決一七枚目裏一行目(同上、一四九頁六行目)から五行目(同上、一四九頁八行目)の「認められるところ、」までを次のとおり改める。

「そして、本件登録請求の範囲中「(基体の)正面背面の内側上方に段2を設けた」との記載及び「基本1に発泡スチロールの覆蓋5を当嵌し、」との記載によれば、構成要件(3)にいう掩被密閉の具体的手段は、段2によつて覆蓋5を支持することを内容とするものであることが明らかなところ、」

二  (均等の主張について)

控訴人は、本件考案の構成要件のうち構成要件(1)の「発泡スチロールの基体を次々と継ぎ合わせたものであること」が必須的要件であり、その余は付随的要件に過ぎないから、イ号物件が右の必須的要件を具備する限り、構成要件(3)の密閉構造を欠いても、本件考案の技術的範囲に属し、そうでないとしても本件考案と均等である旨主張する。

しかし、実用新案法五条四項によれば、登録請求の範囲には「考案の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない」のであるから、実用新案の登録を受けた者は登録請求の範囲の記載の全部が考案の構成に欠くことができないものとして実用新案権を取得したものというべきである。従つて、登録実用新案の技術的範囲は登録請求の範囲記載の構成要件の全部に基いて定めなければならず(実用新案法二六条、特許法七〇条)、たとえ実用新案権者が登録請求の範囲に考案の構成に欠くことができない事項でない事項を記載した場合であつても、その記載が付随的要件に過ぎないことを理由として、これを具備しない物品が考案の技術的範囲に属することは許されないといわなければならない。そうだとすると、本件考案の構成要件(3)の密閉構造が付随的要件に過ぎないことを理由として、これを欠くイ号物件が本件考案の技術的範囲に属し、または本件考案と均等であるとする控訴人の主張は主張自体失当である。

ところで、一般に或る物品が登録実用新案(にかかる物品)と均等であるというためには、両者の構成が技術的目的を同じくし、相違する構成は互に置換してみても同一の作用効果を生じ、その置換が登録出願時において通常の専門家の当然なし得る程度のものであることを要する。そして、本件考案の構成要件(1)のうち「基体の正面背面の内側上方に段2を設けた」構成及び構成要件(3)が細菌の侵蝕防止という課題の解決を目的としそれに副う作用効果を生ずるものであることは前認定(原判決引用)の明細書の記載特に「ビニールシーツで掩被密閉するために、細菌の侵蝕を防ぎ、」との記載に照らし明らかであるところ、イ号物件は前認定(原判決引用)のとおり、基体の正面背面の内側上方に段を欠き、基体の底部に突出部を設けて覆蓋をこれに乗架し、基体に内装したビニールシーツの周縁を基体の上端部に引掛けてその外側に垂下されており、これで覆蓋の外縁を掩被密閉する構造になつていない。そうすると、本件考案とイ号物件の右各構成はその目的、作用効果が異なることが明らかであるから、本件において均等論を適用する余地はない。

従つて、控訴人の均等の主張は採用の限りではない。

三  (不完全利用の主張について)

第三者が実用新案権侵害の責任を免れるために、考案の構成要件のうち比較的重要性の少い事項を省略し、その代りに考案の作用効果を低下させる以外に何らの作用効果を伴わない事項を付加した技術を用いて登録実用新案の類似品を製造、販売、使用するときは、右の行為がいわゆる不完全利用として考案の保護の範囲を侵害すると解すべきことは控訴人主張のとおりである。

そして、控訴人は、本件考案の構成要件(1)のうち「基体の正面背面の内側上方に段2を設け」る構成は右段2によつて覆蓋を支持する手段であるところ、イ号物件は右段2を省略して、基体底部にわざわざ突出部を設けてこの部分で覆蓋を支持する構成をとつているが、右突出部を設けることは本件考案の作用効果を低下させる以外に何らの作用効果を伴わない旨主張する。しかし、原審における被控訴人株式会社サンスイ代表者本人尋問の結果によれば、イ号物件の基体低部に突出部(畝)を設けこれによつて覆蓋を支持することにより、(1)突出部(畝)の間を水が流れるので水耕液が少量で足りる、(2)水耕液を間欠的に供給して覆蓋と基体底部との間に空気層を形成させ、苗の根が直接空気から酸素を吸収することを可能にする、(3)基体両端上縁で支持するのに比べ苗の重量によつて覆蓋が割れることを少なくする等の本件考案にはない独自の作用効果が生ずることが認められる。

従つて、控訴人の不完全利用の主張はこの点において既に失当であるから採用できない。

四  よつて、控訴人の本訴請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却し、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 瀧川叡一 早瀬正剛 玉田勝也)

原審判決の主文、事実及び理由

主文

一 原告の被告らに対する請求をいずれも棄却する。

二 訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一申立

(原告)

一 被告村上尚彦は別紙イ号図面及び説明書記載の水耕栽培用ベツトを使用してはならない。

二 被告株式会社サンスイは別紙イ号図面及び説明書記載の水耕栽培用ベツトを製造販売及び使用してはならない。

三 被告株式会社サンスイは原告に対し、その製造にかかる前項記載の物件を廃棄せよ。

四 訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決ならびに第三項につき仮執行の宣言。

(被告ら)

主文同旨の判決。

第二主張

(原告)

請求原因

一 原告は次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有している。

登録番号  第一一二〇四八七号

考案の名称 水耕栽培用のベツト

出願日   昭和四五年九月三〇日

出願公告日 昭和四九年六月二一日

登録日   昭和五一年三月九日

実用新案登録請求の範囲の記載(別紙「実用新案公報」参照)

「正面背面の内側上方に段2を設けた発泡スチロールの基体1を次々と継ぎ合せ、前記基体1の内側をビニールシーツで掩い、これに発泡スチロールの覆蓋5を当嵌し、ベツトに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉して成る水耕栽培用ベツト」

二 本件考案の構成要件は次のとおりである。

(1) 正面背面の内側上方に段2を設けた発泡スチロールの基体1を次々と継ぎ合わせたものであること。

(2) 基体1の内側をビニールシーツで掩つたものであること。

(3) 基体1に発泡スチロールの覆蓋5を当嵌し、ベツトに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉したものであること。

三 本件考案の目的及び作用効果は次のとおりである。

従来の水耕栽培用のベツトはコンクリートあるいはプラスチツクを成形したものであるが、前者は重くて運搬取扱いが困難で、作業中、作業者が転倒した場合危険であるし、後者は軽いが成形費が高く、経済的でないなどの欠点がある。

本件考案は軽くて、断熱性の強い発泡スチロールでベツト及び覆蓋を成形したものであるから、施工が容易で安価多量に製造でき、農作業者の負傷の危険性は全くなく、ベツトを次々と並べてベツトの内側にビニールシーツを敷くので、水漏れを防ぎ、またビニールシーツの外周縁でベツトの基体内側の上段に当嵌された覆蓋の周縁を掩被密閉するために、細菌の侵襲を防ぐ効果がある。

四 被告株式会社サンスイは別紙イ号図面及び説明書記載の水耕栽培用ペツト(以下「イ号物件」という。)を製造販売及び使用し、被告村上はイ号物件を使用し、業としてみつばの栽培を行つている。

五 本件考案とイ号物件とを対比するに、イ号物件が本件考案の前記構成要件をすべて充足しており、イ号物件が本件考案の技術的範囲に属することは明らかである。

なお、本件考案の構成要件(1)において、基体1の内側上方には単に「段2を設け」ることとされているが、本件実用新案公報中に記載されている実施例図面において、右「段」は二段の階段状となつている。

ところで、この「段」は基体1に覆蓋5を当嵌してビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉するものであれば足り、別紙図面(イ)、(ロ)に図示するような一段のものも含まれることは明らかである。

また、本件考案の構成要件(3)において、「ベツドに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉したこと」とされているが、本件考案においては、前記「段」とビニールシーツと覆蓋との間には特別な緊締手段はないので、細菌の侵入する隙間は当然存在し、細菌侵入の阻止は不可能である。従つて、ビニールシーツと覆蓋の外縁との間に特別な緊締手段が構成要件とされていない限り、ビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉するということは、細菌の大きさと対比して勘案すると、イ号物件のようにビニールシーツの周縁と覆蓋の外縁との間隙を若干設けたとしても、その間隙の大小は、細菌侵入阻止効果としては程度の差であり、設計上の微差にすぎない。

結局、イ号物件が覆蓋と内装ビニールシーツを備えている以上、その間隙の大小は作用効果として程度の差にすぎないのであつて、この点は、イ号物件は本件考案と均等というべきである。

六 よつて、原告は被告らに対し、申立掲記の裁判を求める。

(被告ら)

請求原因に対する認否

請求原因一、二、四の事実は認める。

同三、五の主張は争う。

被告らの主張

一 本件考案の構成要件のうち、(イ)基体及び覆蓋に発泡スチロールを使用したものであること、(ロ)基体を次々と継ぎ合わせたものであること、(ハ)基体の内側をビニールシーツで掩つたものであることは、以下述べるとおり本件考案出願当時公知の技術であつた。

(イ) 基体及び覆蓋に発泡スチロールを使用したものであること

実公昭四〇―八二七号公報(乙第一二号証の一)には、栽培時の断熱保温効を達成するため、箱体及び箱がフオームポリスチレンにより成形された温床箱が、実公昭四〇―八三〇号公報(乙第一二号証の二)には、頗る軽量で取扱い易いものとして、鉢体及び蓋がポリスチレン粒子(発泡スチロール)で成形された水耕栽培鉢が、特公昭四四―二二四五九号公報(乙第一二号証の三)には、従前のセメント製栽培用器に伴なう不利益を解消し、断熱、保温効の向上に対処するものとして、水耕用器がポリスチレン発泡体より成形された蔬菜その他の水耕栽培装置が、特公昭四四―二五〇九六号公報(乙第一二号証の四)には、従前の木製、セメント製栽培用器の不利益を解消するものとして、水耕栽培用器を独立気泡の発泡体で構成する蔬菜その他の水耕栽培装置が、特公昭四五―五四一七号公報(乙第一二号証の五)には、従来のセメント製容器が有していた製作費が高く、重量が重いため設置にも多大の費用を要する難点を除去するためのものとして、独立気泡を有するポリスチレンなどの発泡体より成形された蔬菜類の水耕用器が、それぞれ開示されていること及び昭和四三年一一月一〇日株式会社誠文堂新光社発行の「農耕と園芸別冊施設園芸資材ガイド」の記載からしても、基体及び覆蓋に発泡スチロールを使用することが公知の技術であつたことは明らかである。

(ロ) 基体を次々と継ぎ合わせたものであること

昭和四〇年四月一〇日農業図書株式会社発行の「礫耕園芸」(乙第七号証の四)の二二頁には、ストレートベツトを並べて連結するようにした栽培用ベツトが記載されていること、実公昭三九―九七〇六号公報(乙第一一号証の一)には、従前の槽状縦長のコンクリートフレームまたは木製基体に代えて硬質合成樹脂製の基体を継ぎ板で長手方向に自在とし栽培装置を拡大できるものとして、礫耕栽培装置におけるフレームが、実公昭三九―三六九三三号公報(乙第一一号証の二)には礫耕栽培器の継目部を金具で係合させて連設する継目装置が、特公昭四〇―二五二〇五号公報(乙第一一号証の三)には、コンクリート製のU字溝を所有個数組み合わせることにより長大なベツトを得ることが可能であるとする礫耕トラフが、それぞれ開示されていることからして、基本を次々と継ぎ合わせることも本件考案出願当時公知の技術であつたことは明らかである。

しかも、本件考案において、「基体を次々と継ぎ合わせる」といつても、基体を継ぎ合わせる技術については何ら示唆するところはなく、単に基体を並べ置くという程度のものにすぎないのであるから、そもそも右の点は考案という技術思想の範疇にも入らないものである。

(ハ) 基体の内側をビニールシーツで掩つたものであること

基体の底部等内側にビニールシーツを敷設することが公知の技術であることは、前記「農耕と園芸別冊施設園芸資材ガイド」の記載からも明らかである。

二 ところで、本件考案の出願当初において、原告は、本件登録請求の範囲につき、「水耕栽培用のベツトを発泡スチロールより正面背面の内側上方に段2を付けたる基体1を成型し、これに発泡スチロールの中央部に適宜の間隔を置きて栽培用の鉢入れ欠缺穴3を穿ち、その前後下端に袖縁4付掩い蓋を当嵌するようにして成る水耕栽培用の水槽ベツト」としていたのであるが、昭和四八年六月二七日前記「農耕と園芸別冊施設園芸資材ガイド」なる刊行物の存在を理由として、拒絶理由通知を受けた。

そこで、原告は、同年九月一二日意見書に代わる手続補正書を提出して、明細書の全文を補正し、本件登録請求の範囲を「正面背面の内側上方に段2を設けた発泡スチロールの基体1を成形し、これに発泡スチロールの中央部に適宜の間隔を置きて水耕用の鉢入れ欠缺穴3を穿ちたる覆蓋の前後下端に袖縁4を設けた覆蓋5を当嵌して成る水耕栽培用のベツト」とした。

さらに、原告は、同年一二月一八日付で手続補正書を提出し、本件登録請求の範囲を本件実用新案公報記載のとおり補正し、公告されに至つたものである。

三 本件考案の構成要件のうち、前一項(イ)、(ロ)、(ハ)の各要件が出願前公知の技術であつたこと及び前項記載の出願経過によれば、本件考案における必須の構成要件は、(イ)発泡スチロールの基体正面背面の内側上方に段2を設け、(ロ)発泡スチロールの覆蓋5を右段部に当嵌し(実施例図面第五図では基体に設けた段2に対応して蓋の左右下端に袖縁が設けられている)、(ハ)このようにすることによつて、基体に内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉するという点に存するものというべきである。

このことは登録異議の決定において、右のような段部の形成、ビニールシーツの内装、覆蓋の当嵌という密閉構造の故に「細菌の侵蝕を防ぐという明細書記載の効果がある」ことを殆ど唯一の理由として登録が認められている経過に照らしても明らかである。

四 これに対し、イ号物件は、本件考案における必須の構成要件である、基体に段部を形成し、これに蓋を当嵌し、内装したビニールシーツで密閉するという構造を有していないのであるから、イ号物件が本件考案の技術的範囲に属しないことは明らかである。

五 原告は、本件考案における、基体の段部の形成及び密閉構造の点はさしたる作用効果を有するものではなく、イ号物件と本件考案は均等である旨主張する。

しかしながら、本件考案のうち、「覆蓋を基体に当嵌する」ということは、基体に段部を形成しているからこそ可能なのであり、別紙図面(イ)、(ロ)に図示されるものはいずれも「当嵌」には当たらない。そして、密閉構造の点も、基体に段部を形成しているからこそ可能であると考えられるのである。

なお、本件実用新案公報の図面の簡単な説明及び考案の詳細な説明中に、本件考案の実施例として、覆蓋は両端下端に袖縁を設けたものであつて、基体に設けた段部に右覆蓋の袖縁を「嵌着」すると記載されているが、別紙図面(イ)、(ロ)に図示されるものが、「嵌着」に当たらないことも明らかである。

さらに、前述したとおり、原告は、本件考案の出願当初において、密閉構造なる点は登録請求の範囲に示していなかつたのであるが、後に密閉構造による細菌の侵入防止という作用効果を加え、本件考案のとおりの登録請求の範囲に変更したのである。

従つて、右事実を無視して、密閉構造による作用効果はとるに足らないものである旨主張することは、自己の権利を自ら否定するものであり、本件考案の権利範囲を拡大解釈することになるのであつて、到底許されない。

イ号物件は、基体にビニールシーツを敷設し、蓋をかぶせるという点は、別紙図面(ロ)に図示されているものに近いが、蓋は右図面(ロ)のように浮いている状態ではなく、基体底部に設けられた畝部に乗架する状態となつている。

従つて、イ号物件においては密閉構造とはなつていないのであつて、このことは、基体横部に凹部(切欠部)を設けていることからも明らかである。

以上の次第で、原告の前記主張は理由がない。

六 その他、イ号物件は、本件考案とは異なつた次のような作用効果を有している。

1 蓋を基体畝部で多点支持するので、基体両側上縁で支持するのに比して、外力により蓋が折れたりすることがなく丈夫である。

2 基体底部に畝部を設けたことにより畝ごとに培養液が独立して流れることとなるので、(イ)液量が少量ですむ、(ロ)液の入れ代りがよい、(ハ)病気感染の場合早期発見して、独立した畝部分のみの被害で防上することができる。などの効果がある。

3 基体横部に設けた各凹部(切欠部)はトマト等果菜類について、この切欠部を利用して両外側から茎を入れ、内部で根付かせて栽培することができる。

(原告)

被告らの主張に対する反論

一 特許侵害訴訟における侵害成否の判断の基礎となる当該権利の技術的範囲の解釈にあたつては、当該考案の構成要件中新規性を有する(未公知)部分を必須的構成要件となし、新規性のない(公知)部分は付随的構成要件としてとらえるべきである。

ところで、本件考案の構成要件のうち、「発泡スチロールの基体を次々と継ぎ合わせる」という部分は、本件考案出願前には公知例は存在せず、右構成は原告においてはじめて考案、開示されたものであり、新規性を有するから、これを必須的構成要件と考うべきである。このことはその作用効果に徴しても明らかである。

即ち、明細書に、「容易に安価に多量に生産が出来、又作業者が施工は勿論、農作業中に於いてもベツト、覆蓋に、ころびて体を打ちつけて負傷する等の危険は全くなく安心して作業できる効果がある」とあり、また「運搬取扱いに軽くて、また施工が容易でベツトを次々と継ぎならべて……………」と記載されているように、随時随所において単に基体を継ぎ合わせるだけで簡単に必要な大きさの水耕槽を製作することができ、本件考案の要部は、まさにこの点に存する。

そして、イ号物件は、「発泡スチロールの基体を継ぎ合わせる」構造を具有しているのであるから、本件考案の技術的範囲に属することは明らかである。

被告は、本件考案の必須要件は密閉構造の点に存する旨主張する。

しかし、右密閉構造の構成要件については、本件登録請求の範囲の記載によれば、「段2」という手段が記載されているが、それがいかなる手段、態様により密閉させるかの具体的な構造については何らの記載がない。このことは、公知の蓋付の箱と比べて相違するような特異の構成でないことを意味するから、右密閉構造の点は、公知技術に属し、必須的構成要件とは認められず、付随的構成要件というべきであり、イ号物件が、これを有しなくとも、本件考案と均等というべきである。

また、イ号物件が袖縁4を欠くことも設計上の微差にすぎない。

二 なお、被告らは、本件考案の登録異議の決定において、右密閉構造の故に「細菌の侵蝕を防ぐという明細書記載の効果がある」ことを理由にして登録が認められていることから、右構造が本件考案の必須的構成要件である旨主張する。

しかしながら、登録異議決定の理由は、あくまでも異議申立人の提示した公知文献の適否に対する判断という面においてのみ意味があるものであつて、当該考案における各構成要件相互の重要性の比較についてまで判断をしているわけではないから、被告らの右主張は理由がない。

第三証拠〈省略〉

理由

一 原告が本件実用新案権を有していること、本件考案の構成要件が次のとおりであることは当事者間に争いがない。

(1) 正面背面の内側上方に段2を設けた発泡スチロールの基体1を次々と継き合わせたものであること。

(2) 基体1の内側をビニールシーツで掩つたものであること。

(3) 基体1に発泡スチロールの覆蓋5を当嵌し、ベツトに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉したものであること。

そして、本件考案の目的及び作用効果について、本件実用新案公報(成立に争いのない甲第一号証)の「考案の詳細な説明」の項には、「この考案は、水耕栽培に用いるベツトに於ける基体並に覆蓋の改良に関する。」(第一段二〇、二一行目)、「この考案は、軽くて断熱性の強い発泡スチロールの基体の正面背面内側の上方に段を設けた基体を形成し、これに発泡スチロールの覆蓋の中央部に適宜の間隔を置きて水耕用の鉢入穿設孔を設けて水耕栽培用のベツトとしたものである。」(第一段二九行目から三三行目まで)、「水耕用のベツト及び覆蓋を発泡スチロールで成形したものであるから、運搬取扱いに軽くて、又施工が容易で、ベツトを次々と継ぎならべてベツトの内側にビニールシーツを敷き、水漏れを防ぎ、ベツトの基体の内側の上段にまで覆蓋の袖縁掩被当嵌し、ビニールシーツの外周縁で覆蓋の周縁を掩被して水耕すれば、ベツト及び覆蓋共に発泡スチロールであるから軽くて、また、ビニールシーツで掩被密閉するために、細菌の侵蝕を防ぎ、製作においても発泡スチロールを成形して成るものであるから、容易に安価に多量に生産が出来、又作業者が施工は勿論、農作業中に於いてもベツト、覆蓋に、ころびて体を打ちつけて負傷をする等の危険性は全くなく、安心して作業が出来る効果がある。」(第二段目一〇行目から二四行目まで)旨記載されていることが認められる。

二 被告株式会社サンスイがイ号物件を製造販売及び使用し、被告村上がイ号物件を使用し、業としてみつばの栽培を行つていることは当事者間に争いがない。

三 そこで、本件考案とイ号物件を対比するに、イ号物件が本件考案の構成要件(1)のうち「発泡スチロールの基体1を次々と継ぎ合わせたものであること」なる部分及び構成要件(2)を具備することは明らかであるが、構成要件(1)のうち「基体の正面背面の内側上方に段2を設けた」との部分及び構成要件(3)を具備していない。即ち、イ号物件においては、基体1の正面背面の内側上方の「段」は、存在せず(別紙イ号説明書によれば、別紙イ号図面中2は「基体上部の段部」と表示されているが、右2は正確には「基体上端部」と表示されるべきものであつて、「段部」を形成しているものではない。)、覆蓋5は基体の底部に設けられた突出部に乗架している状態であつて、基体に当嵌していない。また、基体に内装したビニールシーツの周縁は、基体の上端部に引掛けたうえ、該上端部の外側に垂下していて、ビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉する構造とはなつていない。

ところで、原告は、本件考案における「段2」は、別紙図面(イ)、(ロ)に図示されるものも含み、また本件登録請求の範囲の記載上密閉構造の点については、その具体的手段、態様について明らかとはなされていず、細菌の侵襲阻止という効果においても、本件考案とイ号物件において特段の差異は存しないのであるから、イ号物件の構造は設計上の微差にすぎない旨主張する。

しかしながら、本件考案において、「段2」は基体の正面背面の内側上方に設けられているところ、別紙図面(イ)、(ロ)に図示されるものやイ号物件においては、基体の正面背面の内側上方に「段」は全く設けられていないのであるから、イ号物件が本件考案における「段」を具備していないことは明らかである。

次に、本件登録請求の範囲の記載だけでは、構成要件(3)にいう掩被密閉の具体的手段は明らかではないから、前掲甲第一号証中明細書の考案の詳細な説明の項及び図面の記載を参酌すると、その具体的手段は、袖縁4の付いた覆蓋5を基体内側上方の段2に当嵌させることにあることが認められるところ、イ号物件においては、前記のとおり、基体の内側上方に段はなく、覆蓋は基体の底部に設けられた突出部に乗架せしめられているにすぎず、掩被密閉の具体的手段を欠いていることは明らかであり、単なる設計上の微差にすぎないものと認めることは到底できない。

さらに、原告は、本件考案の構成要件(1)の「発泡スチロールの基体を次々と継ぎ合わせたものであること」という部分が必須的要件であり、構成要件(3)の密閉構造の点は付随的要件にすぎないから、イ号物件が構成要件(1)を具備する限り、構成要件(3)の密閉構造を欠いていても、本件考案と均等である趣旨の主張をする。

しかしながら、前一項に認定のとおり、本件実用新案公報の考案の詳細な説明の項には、「ベツトに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉することによつて細菌の侵蝕を防ぐ効果がある」旨の記載がなされていることからすれば、右構成要件(3)は細菌の侵蝕の防止という課題の解決を図るためのものとして、本件考案の必須的構成要件を形成し、付随的構成要件にすぎないものとは認め難い。

のみならず、実公昭四〇―八二七号公報(成立に争いのない乙第一二号証の一、第一四号証の二)には、植物栽培時の断熱保温効を達成するため、箱体、蓋などがフオームポリスチレンにより成形された温床箱が開示されていること、実公昭四〇―八三〇号公報(成立に争いのない乙第一二号証の二、第一四号証の三)には、鉢体と蓋が発泡融着したポリスチレン粒子よりなる植物水耕栽培鉢が開示されていること、特公昭四四―二二四五九号公報(成立に争いのない乙第七号証の七、第一二号証の三、第一四号証の四)には、従前のセメント製栽培用器に伴なう不利益を解消し、断熱、保温効の向上に対処するものとして水耕用器をポリスチレン発泡体により成形した蔬菜その他の水耕栽培装置が開示されていること、特公昭四四―二五〇九六号公報(成立に争いのない乙第七号証の六、第一二号証の四、第一四号証の五)には、容器を独立気泡の発泡体で構成する蔬菜その他の水耕採培装置が開示されていること、特公昭四五―五四一七号公報(成立に争いのない乙第一二号証の五、第一四号証の六)には、水耕容器が独立気泡をもつて構成するポリスチレン発泡体より成形された蔬菜類の水耕用器が開示されていること、実公昭三九―九七〇六号公報(乙第一一号証の一、第一四号証の一一)には、従来の槽状縦長のコンクリートフレームまたは木製フレームの代りに硬質合成樹脂製の幅広戸樋状のフレームを用い、継ぎ板で長手方向に自在に栽培装置を拡大できる礫耕栽培装置におけるフレームが開示されていること、実公昭三九―三六九三三号公報(成立に争いのない乙第一一号証の二、第一四号証の一二)には、継目部を接合防水材や金具で係合させた礫耕栽培器の継目装置が開示されていること、特公昭四〇―二五二〇五号公報(成立に争いのない乙第一一号証の三、第一四号証の一三)には、コンクリート製のU字溝を組合せることにより長大なベツトを得ることが可能であるとする礫耕トラフが開示されていること、昭和三九年九月一日株式会社養賢堂発行の「農業及園芸」第三九巻第九号(成立に争いのない乙第一四号証の七)、昭和四〇年一二月一日同社発行の「農業および園芸」第四〇巻第一二号(成立に争いのない乙第一四号証の八)及び昭和四三年一一月一〇日株式会社誠文堂新光社発行の「施設園芸資材ガイド」の九七ないし一〇〇頁(成立に争いのない乙第七号証の五、第一四号証の一〇)には、発泡スチロールよりなる覆蓋をした水耕栽培装置が示されていること、昭和四〇年四月一〇日農業図書株式会社発行の「礫耕園芸」(成立に争いのない乙第七号証の四、第一四号証の九)の二一、二二頁には、U字型をした成形スレートベツトを並べて連結するようにした栽培用ベツトが記載されているほか、同一一三、一一四頁には、板材などをもつて組立てた長いベツトの内側にポリシート(合成樹脂シート)を内装して発泡スチロール板よりなる蓋をした液耕ベツトが記載されていること、以上の事実が認められ、右事実によれば、本件考案中構成要件(1)の「発泡スチロールの基体を次々と継ぎ合わせる」という部分は、本件考案出願当時公知の技術であつたものと認めるのが相当であつて、構成要件(1)の右部分が新規性を有し、かつ必須的構成要件を形成していると認めることは困難である。

そして、以上に説示したところを総合すると、本件考案の必須的構成要件(いわゆる要部)は、むしろ構成要件(3)であると認められ(このことは、成立に争いのない乙第二号証ないし第四号証、第六号証、第七号証の一により認められる原告が本件考案につき、特許庁から拒絶理由通知を受け、被告ら主張のとおりの補正をなした経過事実からも明らかである。)、イ号物件が右要件を欠いていることは前記のとおりである。

してみると、本件考案の構成要件(1)のうち「基体の内側上方に段を設けた」との部分及び構成要件(3)を充足しないイ号物件は、本件考案の技術的範囲に属しないことは明らかであり、均等論を適用する余地は存しないものというべきである。

右と同旨の見解に立つ成立に争いない乙第一五号証(鑑定書)の記載は正当と解される。

以上の説示に反する甲第二号証の記載部分及び原告本人尋問の結果部分はたやすく信用し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠は存しない。

よつて、原告の前記主張はいずれも理由がない。

四 以上のとおり、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属しないのであるから、イ号物件が本件考案の技術的範囲に属することを前提とする原告の被告らに対する本訴請求はいずれも理由がなく、棄却を免れない。

よつて、訴訟費用の負担について、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

別紙図面

(イ)

(ロ)

イ号説明書

名称 水耕栽培装置

図面の簡単な説明

第1図は本装置の断面斜視図、第2図は本装置基体の接続部の部分拡大斜視図である。

構造の説明

1は発泡スチロールの基体、2は基体上部の段部、3は覆蓋5の穴で水耕用苗または苗鉢を設置するもの。4は基体1の底部に設けた突出部、6はビニールシーツ、7は基体1をつぎつぎとつぎ合せるための組合枠である。8は基体側壁上部に設けた凹部。

イ号図面

第1図

第2図

実用新案公報

実用新案出願公告 昭四九―二三〇七六

公告  昭和四九年(一九七四)六月二一日

(登録第一、一二〇、四八七号実用新案)

水耕栽培用のベツト

実願  昭四五―九七四七三

出願  昭四五(一九七〇)九月三〇日

考案者 出願人に同じ

出願人 村井邦彦

愛知県海部郡十四山村大字坂中地新田字宮西七一

代理人 弁理士 渡辺[金早]一

図面の簡単な説明

第1図は本案水耕栽培用のベツトの平面図、第2図は正面図、第3図はベツト覆蓋の平面図、第4図はベツトの側面図、第5図は覆蓋の側面図、第6図は本案の実施例を示す側断面図、第7図はベツトの併列実施を示す正面図。1……ベツトの基体、2……正面背面内側の段、3……欠缺穴、4……袖縁、5……覆蓋、6……ビニールシーツ

考案の詳細な説明

この考案は、水耕栽培に用いるベツトに於ける基体並に覆蓋の改良に関する。

従来の水耕栽培用のベツトはコンクリート或はプラスチツクスを成形したベツトは公知であるが前者はコンクリートであるから重くて運搬取扱いに困難であり作業者が作業中ころびでもすれば非常に危険であり、又後者はプラスチツクの成形によるものであるから軽いが成形に価格が高くて経済的でない等何れも多くの欠点がある。

そこで、この考案は、軽くて断熱性の強い発泡スチロールの基体の正面背面内側の上方に段を設けた基体を成形し、これに発泡スチロールの覆蓋の中央部に適宜の間隔を置きて水耕用の鉢入穿設孔を設けて水耕栽培用のベツトとしたものである。

実施例につき、図面に従つて以下に説明する。

実施例第6図において発泡スチロールの基体1の正面背面の内側上方に段2を設け、前記段2に覆蓋5の前後下端に設けた袖縁4を嵌着する、3は覆蓋に適宜の間隔を置きて穿設したる穿孔、6はビニールシーツである。

上記のように構成された水耕栽培用の発泡スチロールの成形によるベツトを次々と継ぎ合せたベツトの内側にビニールシーツを内装し、正面背面の内側の上方の段に覆蓋を当嵌し、前記覆蓋の周縁をベツトの内側に内装したビニールシーツの外周縁で、掩被密閉をするようにしたものである。

この考案は以上説明したように、水耕用のベツト及び覆蓋を発泡スチロールで成形したものであるから運搬取扱いに軽くて、又、施工が容易で、ベツトを次々と継ぎならべてベツトの内側にビニールシーツを敷き、水漏れを防ぎ、ベツトの基体の内側の上段にまで覆蓋の袖縁掩被当嵌し、ビニールシーツの外周縁で覆蓋の周縁を掩被して水耕すればベツト、及び、覆蓋共に発泡スチロールであるから軽くて、又、ビニールシーツで掩被密閉するために、細菌の侵触を防ぎ、製作においても発泡スチロールを成形して成るものであるから、容易に安価に多量に生産が出来、又、作業者が施工は勿論、農作業中に於いてもベツト、覆蓋に、ころびて体を打ちつけて負傷をする等の危険性は全くなく安心して作業が出来る効果がある。

実用新案登録請求の範囲

正面背面の内側上方に段2を設けた発泡スチロールの基体1を次々と継ぎ合せ、前記基体1の内側をビニールシーツで掩い、これに発泡スチロールの覆蓋5を当嵌し、ベツトに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉して成る水耕栽培用のベツト。

引用文献

農耕と園芸別冊施設園芸資材ガイド 誠文堂新光社 昭四三―一一―一〇

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